イアン・J・ミラー
歴史学教授
科学史学部客員教授
東アジア言語・文明学部客員教授
Faculty Dean of Cabot House
日本史・帝国論の研究者。科学、テクノロジー、環境変動の主に文化的側面に着目して研究を行う。コロンビア大学大学院在学中に、ありふれた考え方や行動が、時に、驚くべき方法や予想もしなかった事物を通して、より大きな現象に繋がることに興味を持ち、文化史研究者としての道を歩み始めた。抽象的または疎外的なプロセスと個人の経験との間の繋がりを示唆する史実が、急速に変化する時代のニーズに応えるものである点に気づき、これらの手法の開発を推進してきた。その他、都市史、科学技術史、比較帝国主義、行動と行為主体の哲学などの教育と研究に興味を持っている。
この一例として、初めての著書である、
『The Nature of the Beasts: Empire and Exhibition at the Tokyo Imperial Zoo』では、東アジア初の近代的な動物園である、東京の上野動物園へと読者を導くことで、上記のような研究の目的を追究している 。上野動物園は、自然への新しい見解を示すものであったと同時に、人間と他の動物の関係が「支配するもの」(colonizer)と「支配されるもの」(colonized)と同義であった時代に、「文明人」を生み出すための文化的な装置でもあった。このプロジェクトは日本交流基金、National Endowment for the Humanities、the United States Department of Education (Fulbright-Hays)、 Whiting Foundationの支援を受けている。
現在、著書『Tokyo Electric: Japan in the Age of Global Energy』を執筆中で、その中では世界最大の都市である東京の歴史を「エネルギーの歴史」として捉え直している。 東京電力(TEPCO)は日本最初の電力会社であり、福島第一原子力発電所の所有者でもあるが、その東京電力が持つ非公開のアーカイブを利用した当研究は、American Council of Learned Societies、the Center for Global Research、米国社会科学評議会・安倍フェローシップより助成を受け、Mellon Foundation New Directions Fellowship (2016-2019年)取得のきっかけともなった。 “Carbon and its Discontents”という問いを軸にした当研究は、現代のインフラストラクチャーの整備とその政治的な意味合いに焦点を当て、「唯物論的転回」を深く掘り下げている。
共同研究も積極的に行っており、Julia Adeney Thomas、Brett L. Walker との共著
『Japan at Nature’s Edge: The Environmental Context of a Global Power』を出版。また、日本列島を囲む海と、日本の関わりについての共著書も完成段階である。Nadin Heé、Stefan Huebner、Bill Tsutsuiとの共著書『Oceanic Japan. The Archipelago in Pacific and World History』は、2021年ハワイ大学出版部より出版される予定。
ミラー教授は、ポールソン工学応用科学部所属の妻、クレート・ハーバート氏とともにCabot Houseの学部長を担当し、ハーバード大学科学史学部、東アジア言語文明学部の客員教授を務めている。
また、ハーバード大学マヒンドラセンター、環境フォーラム議長をロビン・ケルシー教授と共に務める。「日本近代史」や「地球環境史」などの博士課程の一般試験分野を定期的に担当。共同研究に興味のある大学院生は、歴史学部及び東アジア言語文明学部(EALC)の両方に応募することを推奨している。