ポストドクトラルフェロー

ライシャワー日本研究所ポストドクトラルフェローシップは、博士課程卒業直後の研究者が研究を続け、博士論文の出版を目指すことをサポートします。フェローは、ハーバードの日本研究コミュニティと様々なかたちで関わり、教員、学生とともに研究に従事する機会が得られます。さらに、ジャパン・フォーラムで研究結果を発表する機会が設けられています。

2019〜2020年度ライシャワー日本研究所ポストドクトラルフェロー

朝比奈祐揮(博士号:2019年ハワイ大学マノア校社会学専攻)

 

不平等、グローバリゼーション、政治社会学などを専門とする社会学者。2019年、ハワイ大学マノア校より博士号(社会学)取得。2013年、国際基督教大学教養学部卒

人々の経済的不平等や不安定さの経験が、なぜ社会や歴史的時期によって異なるのか、という問いに関心を持っている。博士論文「Insecure Millennials: Coming of Age in Seoul and Tokyo」は、日本と韓国という二つの社会に注目、経済発展の軌跡、国家による社会福祉制度の比較的な弱さ、また所得格差の程度などの様々な類似点にもかかわらず、ソウルの若者は東京の若者に比べて強く経済的不安を感じており、不平等に対しても敏感であることを発見した。14ヶ月のフィールドワークと、のべ98人の若者へのインタビューを通して、政治、社会制度、文化などが、いかにして二つの社会で異なる経済的不平等と不安定の経験を生み出すのかを比較の手法から考察した

ライシャワー日本研究所では、上記の博士論文を単行本として出版するための準備を進める。同時に、2011年頃から研究を継続している「現代日本の右派集団と民主主義」に関する研究を発展させる。このプロジェクトは、右派政治グループに注目することで現代日本政治の分析に貢献することを目的としている。

yasahina@fas.harvard.edu

 

ルイス・ブレムナー(博士号:2019年オックスフォード大学日本近代史専攻)

 

2019年、オックスフォード大学より博士号を取得。主に日本史と科学技術のトランスナショナル・ヒストリーに関心を持っている。2017年、東芝国際交流財団研究助成金と豊田市トレヴェリアン基金の研究助成金を得て、日本のアーカイブを用いた研究を実施。

博士論文 「日本のマジックランタン:長い19世紀のトランスナショナルテクノロジー」(「The Magic Lantern in Japan: Transnational Technology Across the Long Nineteenth Century」) は、マジックランタンの歴史を用いることによって、18世紀後半から20世紀初頭にかけての日本とより広い世界との間の知的、文化的、技術的交流を考察する。この技術の輸入、意味付け、製造、利用に注目し、認識論、文化的生産、政治的言説、人道主義などにおける重要な発展も考察する。同時に、この論文は、日本の「長い19世紀」、技術変化における国家の役割、および「近世日本」と「近代日本」の区別の再考を提示する。

ライシャワー日本研究所では、出版に向けて博士論文の研究を続ける。また、日本の科学技術の歴史に関する論文を執筆するとともに、19世紀の「開国」を再検討する巻も共同編集する。

lbremner@fas.harvard.edu

 

林かおる(博士号:2018年プリンストン日本古典文学専攻)

 

2018年プリンストン大学、東アジア研究博士課程修了。日本古典文学専攻博士号取得。2015年秋学期~2016年春学期、2017年春学期東京大学東洋文化研究所にて訪問研究員。2018年テキサス州立大学(世界言語文学学科) 助教、現在に至る。平安、中世物語文学を専門とする他、日本史、宗教学、東アジア映画学・マスメディアにも関心を持つ。

主要研究テーマは古典テクストにおけるもののけ、怨霊の言説・表象の分析と語り論。研究論文「Mediating Sprits: Narratives of Vengeful Spirits and Genealogies in Premodern Japanese Literature」は祟りや災いをもたらすと信じられた死者の亡霊の権力的意義とその鎮魂の社会的、政治的イデオロギー、また怨霊の生産、意義をめぐった、親族という言説の(再)構築を語り論の観点から考察する。特に源氏物語や保元物語を含む十一世紀から十四世紀の物語文学におけるもののけの影と声が果たす語り手としての装置的役割の重要性に注目し、死者ともののけの視点を新たなレトリックとし、テクストを読み解き、論述する。更に、物語文学のみでなく、正史及び愚管抄等の史論、また宗派を超えた宗教文書に現れるもののけの言説を網羅的に解析し、文学、宗教学、歴史学等学術研究の分野を超えた古典テクストの解釈を試み、提示している。

ライシャワー日本研究所在籍中、出版に向けて博士学位論文の加筆修正、編集を行う。更に平家物語を中心とする軍記文学における災害の記憶と語りに焦点を当てた、自然災害と文学の関係に関する論文の出版も予定している。

khayashi@fas.harvard.edu

 

ムレーン・マシュー(博士号:2019年プリンストン大学近代日本の美術史・建築史専攻)

 

2019年プリンストン大学の建築学部より博士号を取得。主に近代日本の美術史と建築史について研究する。最も重要なテーマはアジアとヨーロッパに認識論はどのように「世界建築史」の発展 に歴史的、芸術的、そして建築的に影響したのかである。

博士論文、「世界の観察:近代日本における伊東忠太と建築の知識作り」(「World Observation: Itō Chūta and the Making of Architectural Knowledge in Modern Japan」)では、20世紀初めに日本における「建築」と「観察」の関係を考察する。新しい歴史と建築の知識を養うために、日本で教育者や歴史家によってどのように観察の翻訳、教育や実践がされたのか、特に日本帝国の中で の「世界建築史」の問題を考察する。これらの複雑な歴史を理解するために、博士論文では建築家であり、建築 史家でもあり、建築の理論家でもあり、日本帝国のデザイナーコンサルタントでもある 伊東忠太という人物を中心に考察する。伊東忠太の大きな「世界建築史」のプロジェクトの文章、図画、建物を分析し、博士 論文の中で、どうやってその「観察」という認識論は伝承され、翻訳され、変化したのかを述べる。近代日本での「観察」の書き方、描き方、建ち方の理論を考察する。

ライシャワー日本研究所では、ムレーンさんは博士論文を出版に向けて編集し、近 代日本における「観察という研究の問題」や「それらが日本帝国の建築に与えた影響」に関する記事も書いている。明治時代の建築理論を翻訳し、現代の建築史家とグローバル建築史の方法論の対談を出 版する予定である。

mmullane@fas.harvard.edu